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レギュラーコラム オリス

[2007年09月13日]
第16回「魅力ある出演陣、ここに集結」

『合い言葉は勇気』:フジテレビ系
2000年7/6〜9/14(木)
夜10:00〜10:54(全11回)

脚本:三谷幸喜、演出:河毛俊作、田島大輔ほか
音楽:服部隆之、主題曲:「威風堂々」エルガー作曲
出演:役所広司、香取慎吾、鈴木京香、金田明夫、梶原善、國村隼、麿赤兒、池田成志、
キムラ緑子、山寺宏一、八嶋智人、温水洋一、伊藤正人、唐沢寿明、小野武彦、篠原涼子、伊藤俊人、
半海一晃、土屋久美子、山崎一、寺尾聡、杉浦直樹、津川雅彦、田中邦衛ほか


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 映画の場合でもドラマの場合でも観ている客の心をつかむポイントとして、人物の登場シーン、特に主人公の登場シーンは重要なポイントの一つである。そのシーンが魅力的であったり、ありきたりでない意表を突いた登場であればあるほど、観る側のモチベーションもどんどん上がってくる。だから作り手側も主人公の登場シーンには特に力を入れてくる。それが作品の成功を左右すると言っても過言ではないからだ。で、ドラマ『合い言葉は勇気』の場合はどうかというと、これが今までにない型破りな登場の仕方なのである。大抵の場合は、主人公は第1話の冒頭、または少なくとも始まって15分の間には登場するものである。しかしこのドラマでは出てこない。初回、第1話では放送時間が1時間半あったが、1時間経っても出てこない。そしてラスト3分。東京で弁護士を捜し続けたが見つからず、深夜疲れ果ててホテルで何気なくテレビを見る忠志(香取慎吾)。そのテレビでは法廷ドラマを放映している。その画面に法廷で熱弁をふるう弁護士役の男が映る。その男こそが主人公:暁仁太郎(役所広司)であり、主人公の登場シーンである。こんな主人公の登場シーンは今まで観たことがない。この登場シーンをより一層魅力的にするために、1時間以上の前フリがあったかのようである。当然、そこでボクの観るモチベーションは急上昇し、完全に心をつかまれたのは言うまでもない。

犬塚「(すがるように)教えて下さい。裁判が無理だとしたら、私は一体どうしたらいいんでしょうか?」
弁護士A「(しばらく考えてから)・・・泣きなさい」

(第1話より)

尚子「あなたのこと、一つだけ誉めてあげる」
仁太郎「え(ちょっと嬉しい)?」
尚子「人生ってさあ、上り坂の時もあれば下りの時もあるじゃない?」
仁太郎「ある」
尚子「普通、人間て変わるのよ。調子いい時は、天狗になるし、ダメな時は、卑屈になる。でもあんたは全然変わらなかった。それはスゴいと思う」
仁太郎「・・・(よく分からないが、嬉しい)」
尚子「いつだって、あんたは最低だったわ」

(第2話より)


 舞台となるのは自然に囲まれた小さな田舎の富増村。しかしその自然がフナムシ開発のゴミ処理場が出来たことによって破壊されようとしている。村人たちはその行為に反対しているが、県の許可が出ているため、そして相手側には敏腕弁護士がついているため歯が立たない。そこで村長の犬塚(田中邦衛)は何とかしようと、東京に土地勘のある村職員の忠志(香取慎吾)を連れて、村のために戦ってくれる弁護士を探しに上京する。だがどの弁護士もこの問題には及び腰で誰も取り合ってくれない。弁護士が見つからず困り果てていた時、深夜帰ったホテルでたまたまテレビの再放送である法廷ドラマを目にする忠志。そのドラマでは弁護士役として暁仁太郎(役所広司)が熱弁をふるい、その説得力のある演技を観て忠志は感動する。そこで忠志は思いつく。裁判をやっても勝てる見込みがないのなら、せめてそのことを役者である暁仁太郎の弁護士役で村人たちを説得出来ないかと。忠志にそのことを頼まれた仁太郎は、はじめはバカにして取り合わなかったが、自分が落ち目の役者で今では仕事が無い状態である。仕方なく忠志の依頼を引き受けることに。だが村に行ってみると予想外の村人の歓迎ぶりに仁太郎は感激してしまう。裁判をやっても勝てないと説得するつもりが、仁太郎の本来お調子者である性格も加わり、意図したことと違う方向へ事態は転がり、弁護士のフリをして本当の裁判を起こすことになるのである。


忠志「いや、裁判で勝つには可能性が低すぎるみたいですね。あの、向こうの弁護士いたじゃないですか。網干なんとかっていう。あいつはかなりスゴイ奴みたいで。ね、先生」
仁太郎「網干は、スゴイ」
犬塚「あの、どんな手を使ってくるんすかね?」
仁太郎「いろんな手を使ってきます」
犬塚「例えば?」
仁太郎「・・・あっと驚くような手とか、まさかというような手とか、笑っちゃうような手とか、いろいろです」

(第2話より)

毛野「心配ないよ、仁さん。裁判には勝つ」
仁太郎「無理だ」
毛野「全然」
仁太郎「オレは裁判のさの字も知らねえんだ。漢字で書けるかどうかも自信ない」
毛野「何も知らないから、勝つ気がしないんだよ。その点、僕は法律には詳しい。その僕が言ってるんだからきっと勝つ」
仁太郎「笑わせるな」
毛野「なんたって女弁護士烏賊隅順子シリーズを書いてたのは僕だから」
仁太郎「シリーズったって二本で終わってるじゃないか」
毛野「その二本を書くために、僕は法廷ドラマを百本観た。その僕が言うんだから、この裁判は必ず勝つ」
仁太郎「だったらなんで弁護士たちは、逃げてきたんだ」
毛野「彼らは、百本の法廷ドラマは観ていない」

(第6話より)


 このドラマの面白みは、暁仁太郎が村人たちの前では弁護士のフリをしながら、本当に裁判までやってしまうところにある。ニセ弁護士であることがバレないように誤魔化しながら、役者で培われた演技力で村人たちの心をつかんでいく。そして大企業に雇われた敏腕弁護士を相手に、全く裁判の知識がないのに、仲間を増やし知恵をつけながら互角に戦っていくのだ。そのバレてはならない、大物相手と渡り合わなければならないという緊迫感をコメディタッチに描き、そのありえないような設定を豪華なベテランの出演者たちによってリアルさを生ませ、上質なコメディドラマに仕上げている。会話も三谷脚本らしい意表を突いたセリフのキャッチボールで切れ味もいい。そして主題曲の「威風堂々」も躍動感あふれる曲で、このドラマを効果的に盛り上げている。もうこれは大河ドラマコメディといっても良いくらいの作品なのである。


仁太郎「人間、どん底にいる時、何が一番の救いになるか、教えてやるよ」
蟇田「・・・・」
仁太郎「それは、この世に自分を必要としている人間がいることに気がついた時だ」
蟇田「・・・・」
仁太郎「その時、人間は、この世に生まれて来たことの意味を初めて知る。今まで生きてきたことの大切さに、やっと気付く」
忠志「・・・・」
仁太郎「そして自分が決して一人じゃないってことを悟るんだ。自分には、自分を頼る仲間がいる。そしてその期待に応えることが、自分の使命なんだと知るんだ。生きている証なんだと」
蟇田「・・・・」
仁太郎「俺に言えるのは、あんたを必要としている人間が、ここに確実にいるってことだ。考えてみろ、今までの人生で、こんなに人に必要とされたことがあったか」
蟇田「・・・・」
仁太郎「はっきり言っておく。このためにお前は生まれて来たんだ」
蟇田「・・・・」
仁太郎「ここで逃げたら、あんたは最後までクズだ」

(第7話より)

 そしてこのドラマの特徴としては、大河ドラマ並みのキャスティングにある。ベテランから個性派俳優まで大集合で、主役であるニセ弁護士を演じた役所広司をはじめ、インテリ弁護士役で敵役には最適の津川雅彦、トボケ具合が見事な村長役の田中邦衛、仁太郎を手助けする軽めな放送作家役の山寺宏一、ゲスト出演で表面だけは正義感ぶっている弁護士役の唐沢寿明など、特徴あるキャラクターでそれぞれの役所を見事に発揮している。ドラマの場合、出演者が決まっていて作品を考える場合が多く、ここまでの俳優陣を揃えられることは出来ないと思う。しかしこのドラマでは作品を決めてからキャスティングをし、そしてほとんど希望通りの俳優が出演を快諾してくれたそうである。それほど三谷作品の脚本は魅力的なのである。
 だが、作品的には成功していても、視聴率的には苦戦してしまった。それが原因かは分からないが、民放での連続ドラマはこれが最後になっている。今では映画や演劇での活躍が中心で、それ自体にも十分期待を寄せてはいるが、連続ドラマならではの作品が是非また観たいものである。


近況:夏のドラマ編&海外ドラマ編


『花ざかりの君たちへ〜イケメン♂パラダイス』(フジテレビ系):今だ面白さは継続中。男役をやる堀北真希が普段よりもなぜか可愛く見えます。


『ホタルノヒカリ』(日本テレビ系):今まで幸薄い役が多かった綾瀬はるか。今回干物女のグータラ役で、ぎこちない演技であっても自ら持つ天然も加わりハマってます。他の出演者がかすんで見えるほど、インパクトは強い。
 

『山田太郎ものがたり』(TBS系):映画「夜のピクニック」は作品自体ひどかったが、このドラマでの多部未華子は、過剰なリアクションでコメディの魅力を十分発揮しています。そこだけが楽しみす。


『ER緊急救命室』:現在シーズン12が放映中で、シーズン1から観ているが、よくまあこれだけネタが続くなと感心させられる。それでも作品の質は落ちることはない。むしろ上がってるようにさえ思う。シーズン11でカーターもとうとう卒業し、シーズンⅠからのメンバーはこれでほとんどいなくなった。それでもまだ観たいし、これからも続いて欲しいと思う。このドラマでジョージクルーニーのファンになった。


オリス(ドラマー)


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イラストレーションbyTAIZO(パッションイラストレーター)
セツ・モードセミナー卒。
雑誌等中心に地味にジミヘンに活動中。
番外編!! 「キャプテンスミスの俺のリリックを聞いてくれ!」はコチラから!



第15回「心のファイティングポーズ」はコチラから。


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